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こんにちは。アーバンサイクラー、運営者の「サイクル太郎」です。
ロードバイクやマウンテンバイク(MTB)、そして最近人気のグラベルロードにおいて、もはやスタンダードとなりつつある「チューブレスタイヤ」。
転がり抵抗の軽さや乗り心地の良さ、そして何よりパンクしにくいという圧倒的なメリットに惹かれて導入を検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ自分でタイヤを交換してみようとすると、多くの人が直面する壁があります。
それが「空気の入れ方」と「ビード上げ」です。
「ポンプを何度押してもスカスカと空気が漏れる」「ビードがパチンと上がらない」……こうしたトラブルは、構造を理解していないと解決できず、途方に暮れてしまうことも少なくありません。

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この記事では、チューブレス初心者が陥りやすいポイントを徹底的に洗い出し、誰でも確実に作業を成功させるための手順とテクニックを余すことなく解説します。
この記事で分かること
目次
- チューブレス特有の空気を入れる仕組みと必要な道具
- ビードが上がらない時の具体的なトラブルシューティング
- シーラントの正しい扱い方と空気圧管理のコツ
- 失敗しないための事前準備とメンテナンス頻度
初心者向けチューブレスタイヤの空気の入れ方
まずは、チューブレスシステムにおける基本的な空気の入れ方について解説していきましょう。
従来のインナーチューブを使うクリンチャータイヤとは構造が根本的に異なるため、ただポンプを繋いで押せば良いというわけではありません。
「いかにして気密性を確保するか」という視点を持つことが、成功への第一歩です。
仏式バルブの仕組みと空気を入れる準備

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スポーツバイクで一般的に採用されている「仏式バルブ(プレスタバルブ)」は、高圧に耐えられる精密な構造をしていますが、チューブレスレディシステムにおいては、単なる「空気の入り口」以上の重要な役割を担っています。
インナーチューブがないため、バルブそのものがリムと密着し、気密性を保つための「栓」として機能しているからです。
そのため、扱い方を少し間違えるだけで、空気漏れの主原因になったり、バルブを破損させてしまったりします。
ここでは、空気を入れる前に必ず行うべき「儀式」と、気密を確保するための正しい固定方法について深掘りします。
バルブ先端の「固着」を解除する儀式
空気を入れる際、先端の小ネジ(バルブナット)を緩めるのは基本中の基本ですが、実はそれだけでは不十分なことが多いのをご存知でしょうか。
特にしばらく乗っていなかった場合、バルブ内部の弁(コアシャフト)が内圧やシーラントの成分で張り付き、固着していることがよくあります。
この状態でポンプを繋いでも、ポンプのホース内圧だけが上がってしまい、肝心のタイヤには空気が一向に入っていきません。
小ネジを緩めたら、必ず指先で先端を一度「プシュッ」と空気が抜けるまで押し込んでください。
この「ワンプッシュ」で弁の固着が剥がれ、空気の通り道が物理的に確保されます。この儀式を行うだけで、空気入れのスムーズさが劇的に変わります。
また、仏式バルブの先端は非常に細く曲がりやすいため、ポンプヘッドを脱着する際は、斜めに力をかけず「垂直に」抜き差しすることを心がけましょう。
気密の命綱「リムナット」の正しい締め方
チューブレスバルブをリムに固定している根元のリング状の部品、「リムナット(バルブナット)」。
ここから空気が漏れるのを恐れて、ペンチなどの工具で親の仇のように締め上げている方を見かけますが、これは明確なNG行為です。
チューブレスバルブは、リムの内側にある「ゴムベース(ゴム座)」が適度に変形することで気密を保つ構造になっています。
工具で過剰なトルクをかけて締め付けると、このゴムベースが過剰に押しつぶされて変形し、逆にリムとの間に隙間を作って空気漏れを引き起こしてしまうのです。
- 気密性の低下:ゴムパッキンがよじれたり、ちぎれたりして隙間ができる。
- リムの破損リスク:カーボンリムなどの場合、過剰な力でバルブ穴周辺が割れる恐れがある。
- トラブル時の対応不能:出先でパンクしてチューブを入れる際、工具で締め込まれていると手でバルブを外せず、リカバリー不能に陥る。
正解は、「指で回せるところまでしっかりと締める」こと。
さらに言えば、さらに親指でバルブの頭をタイヤ側(リムの内側)へグッと押し込みながら、もう片方の手でリムナットを増し締めする程度で十分です。
Oリングが入っているタイプであれば、それが軽く潰れる程度が適正トルクの目安となります。
チューブレスタイヤに必要なポンプや道具
「家のフロアポンプで汗だくになってポンピングしているのに、タイヤがピクリとも動かない!」
これはチューブレスデビューで最もよく聞く悲鳴ですが、決してあなたの体力が足りないわけでも、ポンプが故障しているわけでもありません。
原因はもっと物理的な、「流量(Flow Rate)」の不足にあります。
「圧力」ではなく「流量」がすべて

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通常の空気入れは「高い圧力」をかけることには長けていますが、「短時間に大量の空気」を送り出す能力はそこまで高くありません。
ビードが上がっていない状態のチューブレスタイヤは、いわば「底に穴が空いたバケツ」です。
隙間からどんどん空気が逃げていく状態で水位(内圧)を上げるには、漏れていくスピードを凌駕するほどの勢いで、一気に水を注ぎ込む必要があります。
この「一瞬の爆発力」を生み出せるかどうかが、道具選びの最大の基準となります。
私が推奨する機材カテゴリを整理しました。

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| 機材タイプ | 瞬間風量 | ビード上げ成功率 | 導入コスト | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 標準フロアポンプ | 小〜中 | 30%〜50% | 低(所持率高) | 運とタイヤ・リムの相性次第。隙間が大きいと無力。 |
| チャンバー付きポンプ | 特大 | 95%以上 | 高(2万円〜) | タンク一体型。これ1台で普段使いもビード上げも完結する最適解。 |
| 外付けエアタンク | 特大 | 95%以上 | 中(8千円〜) | 手持ちのポンプで空気を溜める別体タンク。コスパ優秀。 |
| エアコンプレッサー | 大(持続) | 100%に近い | 高 | プロ仕様。場所を取るし騒音もあるが、性能は最強。 |
1. 標準フロアポンプ(難易度:ハード)
クリンチャータイヤで使っている普通のポンプです。
タイヤとリムの寸法精度が高く、はめただけでパツパツになるような相性の良い組み合わせであれば、これでも上がることがあります。
ただし、隙間が少しでもあると、ひたすら虚無のポンピングを繰り返すことになります。
2. チャンバー(タンク)付きポンプ(推奨度:★★★★★)
これから機材を揃えるなら、間違いなくこのタイプへの投資をおすすめします。
本体に金属製の「蓄圧タンク(チャンバー)」が備わっており、一度タンク内に高圧空気を溜めてから、レバー操作で一気に開放する仕組みです。
「バスッ!!」という衝撃音と共に、頑固なビードも一撃で上がります。
普段はタンクをスルーして普通の空気入れとして使えるモデルが多く、これ一台あれば全て事足ります。
(代表的な製品:Topeak JoeBlow Booster, LEZYNE Pressure Over Driveなど)
3. 外付けエアタンク(推奨度:★★★★☆)
「すでに良いポンプを持っているから、買い替えるのはもったいない」という方に最適なのが、Schwalbeの「Tire Booster」などに代表される外付けタンクです。
手持ちのポンプでこのタンクに空気をチャージし、それをタイヤに接続して開放します。
リーズナブルかつコンパクトで、遠征時の持ち運びにも便利です。
標準ポンプで格闘して1時間浪費するストレスを考えれば、タンク付きポンプや外付けタンクの導入コストは決して高くありません。
チューブレス運用を快適に続けるための「必要経費」として割り切るのが、幸せなサイクルライフへの近道ですよ。
石鹸水を使ってビードを上げやすくする技

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ポンプの性能以上に、ビード上げの成功率を左右する要素。それが「潤滑(Lubrication)」です。
実は、空気を入れる準備段階で、勝負の8割は決まっています。
乾いたゴム(タイヤ)と金属やカーボン(リム)の間には、想像以上に強力な摩擦力が働いています。
この摩擦がブレーキとなり、どれだけ高圧の空気を送り込んでも、ビードがリムの「ハンプ(脱落防止の突起)」を乗り越えられず、途中で止まってしまうのです。
これを解決する魔法の液体、それが「石鹸水」です。
ここでは、ただ塗るだけでなく、確実に成功させるための具体的なテクニックを伝授します。
自作「アワアワ石鹸水」の黄金比と塗り方
高価な専用ケミカルを買わなくても、キッチンにあるもので最高の潤滑剤が作れます。
- 材料:台所用の中性洗剤(ジョイやキュキュットなど)と水。
- 濃度:普段の食器洗いよりもかなり濃い目、「洗剤 1:水 1」くらいの割合で混ぜます。
- ポイント:スポンジで揉んで、しっかりと「泡立てる」こと。この泡が隙間に留まり、気密性を高めるパッキンの役割も果たしてくれます。
塗り方は「遠慮しない」ことが鉄則です。
タイヤのビード部分(左右両側)だけでなく、リムの内側、特にビードが滑っていく壁面にも、ビシャビシャになるくらいたっぷりと塗りたくってください。床が濡れるのを気にしてはいけません(新聞紙やウエスを敷きましょう)。
もし予算に余裕があるなら、Schwalbe(シュワルベ)の「イージーフィット」などの専用塗布剤を使うのも手です。
これらは作業後に蒸発して乾くため、タイヤが回転方向にズレるのを防ぐ効果があり、ゴムへの攻撃性も考慮されているので安心です。
メリットは「滑り」だけじゃない!空気漏れセンサー機能
石鹸水を塗るメリットは、単にビードを滑りやすくするだけではありません。
泡立った石鹸水が隙間を覆うことで、「どこから空気が漏れているか」をリアルタイムで可視化してくれます。
「ブクブク」と泡が大きくなっている場所があれば、そこが空気の逃げ道です。
泡が出ている箇所(漏れている箇所)を手でグッと押さえつけたり、タイヤを揉んで位置を修正したりしながらポンピングすることで、効率的に隙間を塞ぐことができます。
この「視覚情報」があるだけで、トラブルシューティングの難易度が劇的に下がります。
【絶対禁止】やってはいけない潤滑方法
滑りを良くしたいからといって、チェーンオイルやグリス、あるいは「KURE 5-56」のような浸透潤滑剤を使うのは絶対にNGです。
多くの潤滑油は石油系溶剤を含んでおり、タイヤのゴムを溶かしたり変質させたりする攻撃性があります。
また、乾かずに残り続けるため、ブレーキをかけた勢いでタイヤがリムに対してズレてしまい、バルブが引きちぎれる事故につながる危険性があります。
必ず「石鹸水」か「専用ワックス」を使用してください。
バルブコアを外して空気の流量を増やす

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「石鹸水も塗った。機材も揃えた。それでも空気が漏れてビードが上がらない!」
そんな時に試してほしいのが、空気の通り道にある最大の障害物を取り除くテクニック、すなわち「バルブコア抜き」です。
なぜバルブコアを外すのか?
仏式バルブの先端にある「バルブコア(弁構造)」は、空気の逆流を防ぐ精密な部品ですが、空気を入れる瞬間においては、非常に狭いボトルネック(抵抗)になっています。
これを専用の「バルブコアツール」を使って取り外すと、バルブはただの太い金属の筒(ステム)になります。
この状態にすることで、空気の流れる量が通常時の3倍〜4倍にも膨れ上がります。
バルブコアがある状態が「細いストロー」で息を吹き込む状態だとしたら、コアを外した状態は「水道のホース」で水を流し込むようなものです。
抵抗なく雪崩れ込む大量の空気が、タイヤを一瞬で押し広げ、リムの壁に叩きつけます。
作業手順と「成功後の焦り」への対処
具体的な手順はシンプルですが、初めてやる方が必ず驚くポイントがあります。
- コアを外す:バルブコアツール(数百円で購入可能、または一部のポンプに付属)を使って、反時計回りに回してコアを抜き取ります。
- 一気に充填:ポンプやブースターを接続し、空気を放出します。抵抗がないため、一瞬で「パンッ!」とビードが上がります。
- ポンプを外す(ここが重要):ポンプを外した瞬間、バルブには弁がないため、「バシューーッ!!」と凄まじい音を立てて入れた空気が全量抜け切ります。
ここで「失敗した!」と慌てないでください。これは正常です。
この作業の目的は「空気を入れること」ではなく、あくまで「ビードをリムの定位置(ハンプ)に乗り上げさせること」です。
一度ビードが「パチン」と上がってしまえば、空気が抜けてもビードは簡単には落ちてきません。
空気が抜けきったら、落ち着いてバルブコアを元通りにねじ込み、再度通常の空気入れ手順で規定圧まで加圧すれば完了です。
チューブレスタイヤの空気圧管理と頻度
苦労してタイヤを嵌め、ビードを上げ、シーラントを入れて完成。
「これでメンテナンスフリーだ!」と思ったら大間違いです。
実は、チューブレスタイヤは構造上、分厚いゴム風船(ブチルチューブ)が入っているクリンチャータイヤに比べて、「自然な空気抜け(エアロス)」が早い傾向にあります。
シーラントが膜を作っているとはいえ、タイヤのケーシング(繊維層)の微細な隙間から、空気分子は少しずつ脱走し続けているのです。
「パンクかな?」と疑う前に
初めてチューブレスを使う人が驚くのが、翌日の空気圧低下です。
特にセットアップ直後の数日間は、タイヤ内部にシーラントが馴染みきっていないため、一晩で1〜2気圧(Bar)ほど下がることも珍しくありません。
これは不具合ではなく、チューブレスの「仕様」です。運用が安定した後でも、以下の頻度でのチェックを強くおすすめします。

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| バイクの種類 | タイヤ容積 / 圧 | 推奨チェック頻度 |
|---|---|---|
| ロードバイク | 小 / 高圧 | 乗るたびに毎回(必須) |
| グラベル / CX | 中 / 中圧 | 最低でも3日に1回 |
| MTB | 大 / 低圧 | 週に1回 |
最大のリスク「ビード落ち」を防ぐために
私が空気圧管理を口酸っぱく言う理由は、単に走りが重くなるからではありません。
もっと恐ろしい「ビード落ち」を防ぐためです。
内圧がかかっている間は、その圧力でビードがリム壁面に押し付けられ、気密が保たれています。
しかし、放置して空気が完全に抜け切ってしまうと、ビードを押す力が消滅し、リムの中央(ドロップセンター)へとポロリと落ちてしまいます。
ビードが落ちると、気密は完全に失われます。
つまり、「あの苦労したビード上げ作業」を最初からやり直す羽目になるということです。
さらに、乾いたシーラントが邪魔をして再セットアップが難航することも…。
長期出張や冬場などで乗らない期間があっても、2〜3週間に一度は必ずポンプを繋ぎ、空気を補充して内圧を維持してください。
これがチューブレスを長く使う最大のコツです。
フックレスリムにおける最大空気圧の罠
最後に一つ、安全に関わる重要な注意点です。
最近増えている「フックレスリム(フックのないカーボンリム)」を使用している場合、空気の入れすぎは致命的です。
多くのフックレスリムには、安全上の最大空気圧(例:5.0bar / 73psiまで)が厳格に設定されています。
これを超えて空気を入れると、走行中にタイヤが外れる「ブローオフ」という大事故に繋がります。
タイヤサイドの表記だけでなく、必ず「リムメーカーの指定上限値」を確認し、低い方の数値を守るようにしてください。
また、チューブレス化することで乗り心地や走行性能がどう変わるのか、実際の使用感については以下の記事でも触れていますので、興味があれば参考にしてみてください。
メリダ サイレックス100を徹底評価 魅力と弱点(チューブレス化のメリットについての言及あり)
失敗しないチューブレスタイヤの空気の入れ方
ここからは、多くのサイクリストを悩ませる「トラブルシューティング」に特化した内容です。
「手順通りにやったはずなのに、どうしてもビードが上がらない…」「ただただ空気が漏れる音を聞き続けて1時間が経過した」と途方に暮れている方。
諦める前に、深呼吸をしてください。
ビードが上がらないのには、必ず物理的な理由があります。
ここから紹介する方法を順に試していけば、必ず解決の糸口が見つかります。
チューブレスのビードが上がらない原因

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「ポンプを押すたびに虚しく響くシューシュー音。一向に膨らまないタイヤ。痛み出す腕の筋肉…」
誰もが一度は経験する絶望的な時間ですが、ビードが上がらない原因は、実は物理的に非常にシンプルです。
「ポンプから入ってくる空気の量(供給)」よりも、「隙間から逃げていく空気の量(漏洩)」の方が多いから。
ただそれだけです。
つまり、解決策は「供給量を増やす(ブースター等)」か、「漏れる隙間を減らす」かの2つに1つしかありません。
ここでは、まず最初に取り組むべき「物理的に隙間を減らすアプローチ」について解説します。
諸悪の根源、No.1は「バルブ周りの乗り上げ」

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私がこれまでの経験で見てきた中で、ビードが上がらない原因のトップ(体感8割以上)がこれです。
チューブレスバルブの根元には、気密を保つための大きなゴムベース(ゴム座)が付いています。
タイヤをはめた際、このゴムベースの上にビードが乗り上げてしまっている状態が非常に多いのです。
ビードがゴムベースの上に乗っていると、リムの壁面と密着できず、大きな隙間が空いたままになります。
ここが「空気の特大逃げ道」となり、どれだけポンプを押しても全てここから漏れ出してしまいます。
解決策:バルブを「押し込む」儀式
これを解消するテクニックは非常に簡単ですが、効果は絶大です。
- タイヤをはめ終わったら、バルブの先端をタイヤ側(内側)に向かってグイッと押し込みます。
- バルブのゴムベースがリムから浮き上がります。
- その浮いた隙間に、タイヤのビードを潜り込ませるようにして、バルブの両脇にしっかり落とし込みます。
- バルブを引いて元に戻し、リムナットを軽く締めます。
この一手間を加えるだけで、バルブ周りの気密性が劇的に改善し、あっさりとビードが上がることが多々あります。
タイヤ全体の「マッサージ」で癖を取る
新品のタイヤ、特に折り畳まれて箱に入っていたフォールディングタイヤには、頑固な「折り癖」がついています。
この癖のせいでビードが波打ち、リムとの間に隙間を作ってしまいます。
ポンプを繋ぐ前に、タイヤ全体を手で揉みほぐす「タイヤマッサージ」を行ってください。
- タイヤを左右から挟み込み、ビードをリムの中央(ドロップセンター)から、少しでも外側(ハンプやビード座の方向)へ広げるように癖づけします。
- 特に、バルブの反対側から順に揉み込んでいき、全周にわたってビードが均一にリムに沿っているか確認します。
「空気を入れる前に、手で形を整える」。このアナログな作業こそが、最新のチューブレスシステムを攻略する近道なのです。
コンプレッサーやブースターを使う解決策
石鹸水を塗り、バルブ周りの乗り上げも確認し、タイヤマッサージもした。
それでも空気が漏れ続ける…。そんな時に我々が頼るべきは、小手先のテクニックではなく、圧倒的な「物理的なパワー(流量)」です。
ここで登場するのが、エアコンプレッサーやタンク付きポンプ(エアブースター)です。
これらの機材がやることは単純明快。
「隙間から空気が逃げるスピードを遥かに上回る速さで、大量の空気をタイヤ内に叩き込む」ことです。
「ブースター(蓄圧タンク)」の正しい使い方
自宅で作業する方にとって、最も現実的かつ強力な武器がタンク付きポンプです。
ただ漫然と使うのではなく、以下の手順を踏むことでその威力を100%引き出すことができます。
- バルブコアを抜く:何度も言いますが、これは必須です。せっかくの爆風もコアという「細い穴」を通すと勢いが殺がれてしまいます。
- タンクにフルチャージ:ポンプを「TANK(チャージ)」モードに切り替え、製品の許容最大圧(11bar〜14bar程度が多い)まで親の仇のようにポンピングして空気を溜めます。
- 一気に開放:ホースをバルブに繋ぎ、開放レバーやダイヤルを躊躇なく「ガバッ!」と全開にします。
「バスッ!!」という衝撃音と共にタイヤが一瞬で膨らみ、続いて「パチン!パチン!」という甲高い破裂音が響けば勝利です。
これがビードがリムの壁に密着した(上がった)合図です。
エアコンプレッサーという「最終兵器」
もし自宅にブースターがなく、どうにもならない場合は、近所のプロショップに持ち込むか、あるいはガソリンスタンドの空気入れを借りる(仏式アダプターが必要ですが)という手もあります。
コンプレッサーは、タンクからの高圧供給に加え、モーターで絶え間なく空気を送り続けることができるため、失敗することはまずありません。
特に、ビードワックスを塗った状態でコンプレッサーのエアガンを(コアを抜いた)バルブに直接押し当てれば、どんなに癖の強いタイヤでも一撃で上がります。
メーカー推奨の手順も忘れずに
ただし、力技で解決する場合でも、タイヤの指定空気圧やリムの制限を超えないよう注意が必要です。
各メーカーが推奨する正しい装着フローや安全な圧力範囲については、以下の公式情報も非常に参考になります。
作業前に一度目を通しておくと安心感が違いますよ。
(出典:日本ミシュランタイヤ『チューブレスバイクタイヤの装着方法』)
携帯ポンプやCO2ボンベでビードを上げる

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「ライド中にパンク!シーラントでも塞がらない!」
そんな絶体絶命のピンチで、チューブを入れてクリンチャー運用に切り替えるのも一つの手ですが、もしチューブレスのまま復帰したいなら、強力な味方が必要です。
それが「CO2インフレーター(炭酸ガスボンベ)」です。
手のひらに収まるサイズでありながら、その威力は大型のエアコンプレッサーに匹敵します。
ブースターを持っていない方が、自宅でのビード上げ用に使うのも(コストはかかりますが)非常に有効な手段です。
CO2ボンベを使う際のアドバンテージ
CO2ボンベの最大の特徴は、圧縮されたガスを一気に開放する「爆発力」です。
どんなに頑張ってポンピングしても追いつかない空気漏れも、CO2の圧倒的な流量の前では無力化され、一瞬でビードが「パチン!」と上がります。
バルブにインフレーターをセットしたら、躊躇せずに一気に全開にしてください。
「恐る恐る少しずつ」出すと、勢いが足りずにただガスが無駄に漏れて終わります。
【重要】CO2を使用する3つの大きなリスク

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しかし、CO2は万能ではありません。その特性を理解していないと、タイヤを痛めたり、翌日にペチャンコになったりします。
- シーラントの「凍結・凝固」問題
ガスが急激に膨張する際、「ジュール・トムソン効果」により強烈な冷却作用が発生します。インフレーターやバルブが霜で真っ白になるほど冷えますが、タイヤ内部でも同じことが起きています。
この極低温により、注入済みのラテックス系シーラントが一瞬で凍り、ゴムの塊(ダマ)になってしまうことがあります。こうなるとパンク防止剤としての役目を果たせなくなります。
対策:可能な限り「ビードを上げた後」に、バルブコアを外してシーラントを注入する手順で行うのが安全です。 - 「翌日には抜ける」透過性の高さ
CO2ガスは、通常の空気(窒素や酸素)に比べてゴムを透過しやすい性質を持っています。パンクしていなくても、一晩経つと半分近くまで空気圧が下がってしまうことがよくあります。
対策:あくまで緊急用です。帰宅後、あるいはビードが上がった直後に一度ガスを抜き、フロアポンプで通常の空気に入れ替える作業が必須です。 - 低温火傷のリスク
ボンベ本体は素手で触れないほど冷たくなります。必ずグローブを着用するか、ボンベカバーを付けた状態で使用してください。
携帯ポンプ(ハンドポンプ)でビードは上がるのか?
「ボンベがないから手押しポンプで頑張る」というチャレンジャーな方もいますが、正直に言いますと、成功率は極めて低い(ほぼ無理)です。
ただし、不可能ではありません。以下の条件が揃えば奇跡的に上がることがあります。
- 石鹸水をこれでもかと大量に塗っている。
- バルブコアを外して流量を稼いでいる。
- 後述する「チューブを使って片側のビードを先に上げておく技」を併用している。
- 腕がちぎれる覚悟で、鬼の形相で高速ポンピングを行う。
出先でこれをやるのは体力の無駄使いになりかねないので、チューブレスユーザーはお守りとしてCO2ボンベ、あるいはCO2ハイブリッド型のポンプを携帯することを強くおすすめします。
チューブを使って片側のビードを上げる

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「ブースター付きポンプもない。CO2ボンベも使い切った。それでもビードが上がらない…」
そんな絶望的な状況に残された、私が最も信頼する「最終奥義」をご紹介します。
少し手間はかかりますが、この方法を使えば、高価な機材がなくても、標準的なフロアポンプだけでほぼ確実にビードを上げることができます。
その方法は、「一度インナーチューブを入れてビードを上げ、その片側だけを残す」というものです。
なぜこの方法が最強なのか?
理屈は単純です。チューブレスのビード上げが失敗するのは、左右両方のビードとリムの隙間から空気が漏れるからです。
しかし、片側のビードがすでにリムに密着(着座)していれば、空気の漏れ口は半分になります。
漏れ口が半分になれば、フロアポンプの限られた流量でも、タイヤ内部の圧力を高めることが容易になるのです。
具体的な実行ステップ
この作業は「慎重さ」が命です。焦らず以下の手順で進めてください。
- クリンチャーとして組む:
まず、チューブレスバルブを外し、通常のインナーチューブを入れてタイヤを組み付けます。普通にパンク修理をする感覚でOKです。 - 両側のビードを上げる:
空気を入れて、左右両方のビードが「パチン、パチン」と音が鳴り、完全にリムのフック(またはビード座)に乗るまで加圧します。 - 片側だけを外す(最重要工程):
空気を抜きます。そして、片側のビードだけをタイヤレバー等を使って慎重に外します。
※この時、反対側のビードは絶対にリムから落とさない(外さない)ように注意してください。地面に押し付けたりせず、優しく作業するのがコツです。 - チューブを抜き取る:
外した片側の隙間から、インナーチューブをするすると引き抜きます。 - チューブレスバルブを装着:
チューブレスバルブをリムに装着します。この時、外していない側のビードが邪魔でバルブが入りにくい場合は、バルブ付近だけ少しビードを寄せてスペースを作ります。 - 仕上げの空気入れ:
再度、タイヤの片側をはめます。この時点で、タイヤの片面はすでに気密が保たれた「完成形」です。あとは通常通りポンプで空気を入れるだけ。驚くほど簡単に、残りのビードが上がってくれるはずです。
チューブを抜く際、タイヤの中でチューブが引っかかって、せっかく上げた反対側のビードまで一緒に引っ張って落としてしまうことがあります。
チューブにはベビーパウダーなどを塗って滑りを良くしておくと、スムーズに引き抜けます。
プロのメカニックも、タイヤとリムの相性が悪くどうしようもない時は、迷わずこの手順を選択します。
「急がば回れ」の精神で、ぜひ試してみてください。
シーラントを入れるタイミングと注意点
タイヤの気密を保ち、走行中のパンクを自動で塞いでくれる「シーラント剤」。チューブレスシステムの血液とも言えるこの液体ですが、入れるタイミングを間違えると、ガレージが悲惨な事故現場と化します。
ここでは、最もスマートで失敗のない注入タイミングと、タイヤサイズごとの適正量について解説します。
流派は2つ!「先入れ」vs「後入れ」
シーラントを入れるタイミングには、大きく分けて2つの方法があります。
それぞれのメリット・デメリットを理解して選びましょう。
- 【先入れ法(ダイレクト投入)】
タイヤをリムにはめる際、最後の隙間を少し残した状態で、ボトルの口から直接ドボドボと流し込み、その後にタイヤを完全にはめて空気を入れる方法。
メリット:注射器などの専用工具が不要。
デメリット:ビード上げに失敗して空気が激しく漏れた際、シーラントが周囲に吹き飛び、床や服が大惨事になります。また、作業中にこぼしてしまうリスクも高いです。 - 【後入れ法(インジェクター注入)】※推奨
シーラントなし(ドライ状態)で一度ビードを上げてから、空気を抜き、バルブコアを外してシリンジ(注射器)で注入する方法。
メリット:手が汚れず、量も正確に管理できます。何より、ビードが上がっていることが確定してから入れるので、吹き出し事故が起きません。
デメリット:バルブコアを外す工具と、注入用のシリンジ(数百円〜)が必要です。
慣れている人なら「先入れ」でも手早くできますが、失敗のリスクを考えると、私は圧倒的に「後入れ法」をおすすめします。安心感が段違いです。
シーラントの適正量はどれくらい?

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「多ければ多いほど安心」と思いがちですが、入れすぎると重量増やホイールバランスの悪化(回転ムラ)を招きます。
逆に少なすぎると、パンクした時に穴を塞ぎきれません。
一般的な推奨量の目安をまとめました。
| タイヤカテゴリ | タイヤ幅の目安 | 推奨シーラント量(片輪) |
|---|---|---|
| ロードバイク | 25C - 28C | 30ml - 40ml |
| グラベル / CX | 32C - 45C | 50ml - 70ml |
| MTB (XC/Trail) | 2.0" - 2.4" | 80ml - 100ml |
| MTB (Plus/Fat) | 2.5"以上 | 120ml以上 |
※初めてインストールする新品タイヤの場合、タイヤの内壁やリムの隙間にシーラントが吸収されるため、上記の量より10mlほど多めに入れるのがコツです。
シーラントの「鮮度」とメンテナンス
忘れてはいけないのが、シーラントは一度入れたら終わりの魔法の液体ではなく、消費期限のある「生もの(生鮮食品)」だということです。
タイヤの中で常に空気に触れ、回転による撹拌(かくはん)され続けているため、時間が経つと水分や溶剤が揮発して乾いてしまいます。
乾いてタイヤの内側に薄い膜を作る分には気密保持に役立ちますが、完全に乾ききってしまうと、肝心の「パンク修復能力(液体の流動性)」は失われてしまいます。
長期間メンテナンスをサボったタイヤを外すと、中でシーラントが凝固し、巨大なウニや珊瑚のような謎の物体が転がっていることがあります。
サイクリストの間で「スタニマル(Stanimals)」と呼ばれるこの塊は、パンクを塞いでくれないどころか、カラカラと異音を発生させ、ホイールバランスを崩す原因になります。
メンテナンス:3ヶ月に一度の「生存確認」
では、どれくらいの頻度でチェックすれば良いのでしょうか?
使用環境や気温にもよりますが、一般的には2ヶ月〜3ヶ月に一度はチェックが必要です。
特に夏場や乾燥した冬場は、驚くほど早く乾いてしまいます。
- 音で確認(簡易版):
ホイールを外して耳元で振ってみてください。「チャプチャプ」という液体の音がすればまだ生きています。音がしなければ干からびている可能性大です。 - 棒で確認(確実版):
バルブを4時か8時の位置にしてバルブコアを抜き、細い棒(結束バンドの切れ端など)を奥まで差し込んでみます。引き抜いた棒にシーラントが付着してこなければ、完全に枯渇しています。
液体が減っていたら、バルブから追加で20〜30mlほど「追いシーラント(継ぎ足し)」を行い、常に液体がタプタプと残っている状態をキープしましょう。
注入前の儀式:親の仇のようにシェイクせよ!
最後に一つ、非常に重要なポイントです。
ボトルに入っているシーラントを使用する直前には、ボトルを逆さにして、親の仇のように激しくシェイクしてください。
シーラントの主成分であるラテックスや、パンク穴を塞ぐための粒子・ファイバー(繊維)は、ボトルの底に沈殿しています。
軽く振った程度の上澄み液だけを注いでも、それはただの「白い水」です。
それではパンクは塞がりません。
「もういいだろう」と思ってから、さらにあと10回振るくらいが丁度いいですよ。

アーバンサイクラー・イメージ
チューブレスタイヤの空気の入れ方まとめ
長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。
チューブレスタイヤの空気入れは、最初は「なんて面倒なシステムなんだ!」と絶望するかもしれません。
しかし、今回解説した理屈とコツさえ分かってしまえば、決して怖いものではありません。
最後に、成功のための「三種の神器」をおさらいしておきましょう。
- 機材への投資を惜しまない:タンク付きポンプ(ブースター)があれば、世界が変わります。
- 石鹸水は友達:これ無しで挑むのは、武器を持たずに戦場に行くようなものです。
- バルブコアは抜く:空気の通り道を全開にして、一気に勝負を決めましょう。
もしビードが上がらなくても、焦ってイライラする必要はありません。
「今日は機嫌が悪いんだな」くらいに受け止め、一度休憩してから、片側ビード上げなどの裏技を試してみてください。
乗り心地の良さ、パンクの少なさ、走りの軽さ。セットアップの苦労を乗り越えた先には、それに見合う素晴らしいライディング体験が待っています。
ぜひ、快適なチューブレスライフを手に入れてくださいね!
※本記事の情報は一般的な目安であり、全てのホイールやタイヤでの成功を保証するものではありません。タイヤやリムのメーカー指定空気圧(特にフックレスリムの上限値)を必ず遵守し、作業に不安がある場合は無理をせずプロショップへ相談することをおすすめします。